第10回PRD MEETINGに参加して 渡部 裕之 | インプラント治療の会「さきがけ」

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第10回PRD MEETINGに参加して 渡部 裕之

去る2010年6月9日から15日まで、アメリカ東海岸のボストンで開かれたPRDミーティングに参加してきましたのでご報告します。

PRDとはPeriodontics and Restorative Dentistryの略で、主に歯周病学(インプラント、組織再生療法を含む歯槽膿漏の治療法・学問)および修復歯科学(あごのかみ合わせや詰め物・かぶせ物についての治療法・学問)を意味しています。

今回は第10回の記念大会であり「Periodontal,Restorative,and ImplantDentistry:Classic,Contemporary,and Future Therapeutics (歯周病歯科学、修復歯科学、インプラント歯科学:古典的、現代的、そして未来の治療方法)」をテーマに、北米南米を中心にヨーロッパ、アジアから1000名をはるかに越える参加者が集まって4日間に渡って14のテーマに分かれ、世界各国から著名な臨床家や研究者約90人が発表を行いました。参加者は、各テーマの中から自分の興味のあるセッションに自由に参加することができます。今回4日間の学会を通して僕自身が参加したセッションのうち、特に印象的だったものについてご報告いたします。

Dr.Daniel Buser
:抜歯後、インプラントを埋入する時期について、抜歯後の期間を3つに分けてそれぞれの場合について、その術式についてITIシンポジウムで得られたコンセンサスに基づいて説明されていました。”Timing is crucial!”(タイミングが大事!)
GBRの際に組織を安定させるため、吸収性膜を二重に置くテクニック(ダブルレイヤーテクニック)やGBRの際にインプラントに直接接する部分には自家骨をその他の部分にそれ以外の補填剤を置くことなどのテクニックについても説明されていました。

Dr.Ueli Grunder
:特に今までお話になられてきたことと変わりはありませんでしたが、あらためてインプラントの埋入位置の重要性、頬側に骨と軟組織の移植を行い厚みを確保すること、患者様が生来持っている歯の形も重要で、事前にできることとできないことを説明しておくことも大切である、と言うことも付け加えさせて下さい。

Dr.Stuart J.Froum
:インプラント周囲炎の扱いについて解説されていましたが、その原因のかなりの部分に、セメントの取り残しがあるという事実に(相当枚数のスライドと共に)驚かされました。

Dr Araujoe Dr.Ronald E Jung
:抜歯後の組織の治り方について解説され、続いて具体的に口蓋(上あご部分)部分から粘膜片を採取してBio Ossなどの骨補填剤と共に組織の再生を促し骨が吸収しないようにする方法について解説されました。

Dr.J Kan
:前歯部インプラントの抜歯後即時埋入の適応症、診断、手技についての講演です。すべての症例において歯肉のBio TypeがThin(薄い)物として丁寧に取り扱うこと、特に中でもlow crestタイプの歯肉では注意が必要、根尖部分に4~5mmの骨が存在していれば初期固定が得られること、インプラントの形態は先細りのテーパードタイプのものを選びその直径は骨の頬舌径から決めること、埋入時ドリルを頬側に持っていかれないように十分注意すること、上皮下結合組織移植が歯肉のレベルを保つために有効である点などについて、丁寧に解説されていました。講演後、数名の若い先生方に3-40分以上取り囲まれ質問攻めにあっていましたが、いやな顔ひとつせず一つ一つ質問に答えていらしたのが印象的でした。

Dr Joseph P.Fiorellini
:糖尿病と骨粗しょう症がインプラント治療に与える影響について解説なさいました。具体的にはHbA1c グリコヘモグロビンが7%を越えると注意が必要であり、8%以下であればインプラント治療が可能である点、コントロールされた糖尿病では健常者の間でインプラントと骨との接触にあまり差がないが、高いHbA1cを有する場合は長めの治癒期間が必要である点、などについて述べておられました。

Dr Marc Quirynen
:重度の歯周病に罹患した患者様へのインプラント治療についての興味ある内容でした。口の中の歯をすべて抜いてしまっても歯周病の原因となる細菌は、(A.a.菌やP.g.菌を除いて)消失しないこと(唾液や舌、扁桃体などに存在し続けている)、インプラント手術後(アバットメントコネクション後)約1週間でその周囲にバイオフィルムが形成されるということ、またインプラントの表面性状に関しては、特にHA(ハイドロキシアパタイト)コートやプラズマスプレーなどのラフな性状のものがインプラント周囲炎を起こす可能性が高いと言う点、歯周病の経験がある患者様がインプラント周囲炎になりやすいということは無いが、侵襲性歯周病の経験がある場合はそのリスクが高くなるという点、などについて文献的考察をして下さいました。

Dr Peter Schuepbach
:今回、個人的にはこの先生の講演が一番印象に残りました。PRD Meetingでは珍しく(?)基礎歯科医学・組織学の先生で、スライドは組織切片(顕微鏡の写真です)の連続でしたが、興奮させられました。比較的小さい会場で参加者もそれほど多くはなかったのですが、この先生の講演が始まる直前にこのMeetingのChairmanであるDr.Myron Nevins が最前列に座られたことからも、この先生の講演への期待度の高さが伺われます。ともかく、通常は退屈な組織切片の写真が、画像処理の結果とてもきれいにスクリーン前面に映し出され、正直、学生時代このスライドで勉強させてもらえればもう少し熱心に授業を聴いていたのではないかと、言い訳めいたことまで考えてしまいました。この講演の中で一番印象に残ったのが、ジルコニアという最新の材料と人の組織との間で起る相互反応についてでした。ジルコニアのアバットメント(土台の上に立つ支台部分です)に対しては、天然の歯と同様に周りの組織との結合様式が見られると言うことです(上皮性付着と結合組織性付着といいます)。これは画期的な事実であり、今後ますますインプラントのみならずさまざまな歯科の分野でのジルコニアの応用が期待されることと思います。

その他にも、在米(ボストン)約20年となる日本人の歯周病専門医 諸井先生から直接お話をお聞きする機会があり、その中で興味を惹かれたことがいくつかありました。近々の米国の歯周病専門医へのアンケートで、仕事の中で一番大きな割合を占めていることが第一にsocket preservation 抜歯窩保存術、続く第二が根面被覆処置でありインプラントはその次であると言う点。また、さまざまな先生が(いろいろな経験、技量を持った先生方が)インプラント治療を始めだし、インプラントのありえないような失敗が増えてきていると言う点などでした。

以上ご紹介できたのはほんの一部の講演ですが、今回は皆様にそれよりももっとお伝えしたいことがあります。まず、さきがけのメンバーである石川県の船登彰芳先生や静岡県の石川知弘先生らの論文が、イタリアのDr Tiziano Testori 先生他複数の先生方に引用されていたことです。

また、同じくさきがけのメンバーである京都府の木林博之先生、大阪府の中家麻里先生、茨城県の根本康子先生(あいうえお順)らが、あの最高学府ハーバード大学で講演をなさり大好評を博してきたことです。自画自賛のようですが、これらのことからも、さきがけの目指すところ「世界標準レベルの治療」と言うものが、見掛け倒しでないということがお分かりいただけると思います。
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(写真左より)
さきがけメンバー 濱崎知之先生 根本康子先生 中家麻里先生 筆者:渡部裕之 木林博之先生

最後になりますが今回は、さまざまな出会いがありました。同じツアーで知り合った日本人の先生方はもちろん、学会場でたまたま隣同士となった地元の一般開業医の先生や補綴の専門医の先生らと仲良くなり、ランチをしながらいろいろ話を伺うことができました。 今まで大学関係の先生方と直にお話させていただく機会は今までも多少はありましたが、一般の開業歯科医師の方々とはなかなかそのような機会がありませんでした。どの先生方も職業人として「歯科医師」という仕事にとても誇りを持っておられ、現在この仕事に従事していることに感謝していると言っておられたのが印象的でした。

一人の先生はGP general practitioner (一般開業医)であり、通常自分で歯周病の治療やインプラントを行うことはないそうですが、自分の患者さんを歯周病専門医などに紹介した場合、その先でどのような治療を自分の患者さんが受けてくるのか知っておく必要があるから自分は今ここにいるんだ、ということをおっしゃっていました。また、米国は訴訟社会だからリスクを回避するために専門医にはならなかった、と言う彼の言葉には米国ならではの背景があるのだと痛感しました。

どの先生方も日本にとても良い印象、イメージを持っておられ、一人息子さんが今一番訪れてみたい国が日本であったりとか日本の文化に対して大いなる関心を持っていらっしゃいました。

今回得たさまざまな知識や何より大きな刺激を、今後の診療に生かして、他のさきがけメンバーとともに切磋琢磨していければと考えております。

上尾インプラントセンター わたなべ歯科医院  渡部 裕之

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