骨補填材についての説明の前に、骨伝導能(Osteoconduction)と骨誘導能(osteoinduction)について説明します。
骨伝導能とは、「骨組織の部位に沿って骨組織を増加させる能力」で、骨を失った部位の母床骨の中に存在する骨を創る細胞(骨芽細胞)を活性化して、骨形成を促す能力を示します。また骨誘導能とは、「骨組織の部位以外に骨を形成することができる能力」で、骨を失った部位の周囲から骨芽細胞を誘導して骨形成を促す能力を示します。続いて骨移植材の種類を説明します。
1.自家骨 | (Autogenous graft) | |
2.他家骨 | (Allogeneic graft) | 脱灰凍結乾燥骨(DFDBA) |
非脱灰凍結乾燥骨(FDBA) | ||
3.異種他家骨 | (Xenograft) | 牛骨由来移植材(Bio-oss®) |
4.人工材料 | (Alloplast) | 三燐酸カルシウム |
ハイドロキシアパタイト | ||
硫酸カルシウム |
1.自家骨(Autogenous graft)患者様本人の骨を意味します。
通常は口腔内のオトガイ部や下顎臼歯部後方、そして骨隆起部から採取しますが、足などから採取する場合もあります。
利点 | ・骨誘導能が高い |
・口腔内から比較的容易に採取できる。 | |
・安全性が高い。(未知の疾病の感染がない) | |
欠点 | ・外科的侵襲が高い。(場合によっては、口腔内に手術部位が2ヶ所必要) |
・吸収が速い。(必要な骨のボリュウムを維持できない可能性が高い) | |
・採取する量に限りがある。(骨造成に必要な量を採取出来ないことがある) |
2.他家骨(Allogeneic graft)
自家骨以外で骨誘導能があるとされているのは、脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)と 非脱灰凍結乾燥骨(FDBA)である。このDFDBAとFDBAは、ヒト由来の生体材料です。安全性については、スクリーニングによる安全なドナーの確保、放射線処理による抗原性の除去などの処理により、ほぼ安全とされています。この製品は、米国医療用具・医療機器に対する安全要求事項を満たしており、FDA承認を取得していますが、厚生労働省の承認は得られていません。未知の病原微生物による感染の危険性は、統計学上1/1,600,000,000 や 1/2,800,000,000という文献が報告されています。
利点 | ・骨誘導能がある。 |
・自家骨の不足を補えるため、不要な外科的侵襲を避けられる。 | |
欠点 | ・未知の病原性微生物の存在は、完全に否定できない。 |
3.異種他家骨(Xenograft)
牛骨由来移植材(Bio-oss®)牛骨を高熱(約300℃)で焼却処理し、タンパク質やその他の有機質成分が存在しな状態にした製品です。異常プリオン由来の疾病の感染の危険性については、安全性に問題がないとされています。製造過程で、プロテインの除去がされており、米国・欧州の医療用具・医療機器に対する安全要求事項を満たしていて、FDA承認と欧州通知機関よりCEマークの取得をしています。
利点 | ・骨伝導能がある。 |
・置換性吸収が遅いため外側性の骨造成や容積の大きな骨造成(Sinus Lift)等に有効。 | |
欠点 | ・狂牛病やヤコブ病に対する問題から、心情的に使用しにくい。 |
4.人工材料(Alloplast)
三燐酸カルシウムハイドロキシアパタイト硫酸カルシウム人工的に合成された代用骨です。骨伝導能は認められているが、骨誘導能は期待できません。安全性については問題ありませんが、実際の臨床成績に関しては他の代替骨と比較して有効とされていません。
利点 | ・骨伝導能があるものもある。 |
・病原微生物による感染の危険性は全くない。 | |
・厚生労働省の承認が得られているため入手し易い。 | |
欠点 | ・臨床成績が他と比較して有効でない。 |