上あごの奥歯の上方には副鼻腔といわれる空洞の一つである「上顎洞」という空洞があります。
この空洞の大きさは個人差も大きく、年齢によって徐々に拡大する傾向にあります。
この空洞の存在のため、上あごの奥歯にはインプラントを埴立するための骨の量が足りないケースが多くあります。
インプラント手術前、もしくはインプラント手術と同時にこの空洞に骨を造成するテクニックをサイナスリフトと呼びます。
広義のサイナスリフト法には上顎洞の下方向からアプローチする「ソケットリフト」と、上顎洞の側方から骨に窓を開けて行う狭義のサイナスリフト法である「ウインドウテクニック」があります。
補足(別項あり) ウインドウテクニック:
通常、サイナスリフトというとこちらの方法を一般的には言います。
上顎洞の側方の骨を慎重に削って窓を開けていきます。
上顎洞の内側には「シュナイダー膜」と呼ばれる非常に薄い粘膜上皮が覆っています。ちょうど卵の内側にある薄い膜と同じ程度です。
骨を削る時にこの膜を破らないようにするにはかなり高度なテクニックが要されます。
最近はこの時より安全に処置のできるピエゾと呼ばれる最新の機械も出てきています。
次にこの膜を慎重に少しずつ剥離していきます。
剥離することによってできた空洞に自家骨もしくは骨補填材(骨と同様の組成で最終的に自家骨に置き換わっていくもの)を填入し、最初に削ってできた穴(ウインドウ)に吸収性の膜でふたをします。
何ヶ月か時間をかけて徐々に自分の骨に置き換わっていきます。
この手術法はかなり高度なテクニックを要しますので、種々の統計を見ましても成功率は専門医であっても80%程度から100%ちかくまでとばらつきも大きく、技術レベルの差が成功率の差に反映されやすいといわれています。